ウナギの魚醤「鰻能(ばんのう)」の物語

きっかけ

 魚醤の開発は、私がウナギ加工業の(株)あつみを訪問した際に、利用されない大量のウナギの頭の存在を知ったことがきっかけです。その有効活用を目指して、過去に魚醤の商品開発で関係のあるイチビキ(株)に、ウナギの頭を使った魚醤の開発を持ち掛けました。イチビキは、商品化となれば日本初となるウナギ魚醤の開発に意欲的で、すぐに新商品開発に取り組むことになりました。

 ニホンウナギは平成26年に絶滅危惧ⅠB類としてレッドリストに掲載され、持続的利用が危ぶまれる貴重な天然資源です。限りある資源の有効活用とウナギ本来の美味しさを生かした調味料として再生できればと考えました。

キャリア教育

 (株)あつみからイチビキ(株)に持ち込まれたウナギの頭300㎏は、食塩を混ぜて醸造容器に入れ、醸造を促すために恒温倉庫に保管しました。約半年の醸造期間を経て製品になります。その間に、「ウナギの魚醤」の開発にあたり「商品名」「新商品の開発」「イメージキャラクター」を、東三河の全ての公立高校で学ぶ生徒の皆さんから募集したいと考えました。この募集を通して生徒の皆さんが地域の産業について考える機会となり、6次産業化の取組やマーケティング等について学ぶことにより、キャリア教育の一助となることを目指しています。

東三河の高校生

 新商品開発において商品名等を高校生に考えてもらう取組は、多くの関心を集めメディアにも取り上げられました。結果として、東三河の生徒さんから1470通という大変多くの応募がありました。学校では貴重なキャリア教育の実践の場としてとらえ、積極的に働きかけてくださいました。

選考作業

 1470通という大変多くの応募作品は、生徒一人一人の思いが凝縮され、その中から最優秀作品を選考することは、判断基準の難しさを感じつつもワクワクする作業でした。

商品名等決定

 「商品名」「イメージキャラクター」について厳選の結果、最優秀賞1名、優秀賞2名、入選3名の作品が選出され、開発に関係した3社の代表者から、生徒たちは表彰されました。

 商品名は「鰻能(ばんのう)」、サブタイトルは「鰻ナンプラー」イメージキャラクター「とうしょー君」は下図のとおり決定しました。「とうしょー君」の由来はウナギの頭(とう)でしょうゆを作ったことや、とうしょー君と表記したほうが親しみやすいキャラクターになるとのことでした。

商品化に向けて

 「商品名」「イメージキャラクター」の決定を受けて、いよいよ商品ラベルの制作です。商品化に関わった多くの関係者の思いを実現し、商品イメージを大きく左右する大切なです。複数のデザイン案を比較検討しながら厳正に選考作業を行いました。

新商品「鰻能(ばんのう)」

 ウナギの魚醤「鰻能(ばんのう)」の物語は、商品化に向けてラベルデザインや価格も決定し、第1幕を閉じることになりました。ウナギの魚醤の商品化は日本初の取組となります。東三河の企業が持てる力を結集し、東三河の高校生の前向きで柔軟な発想を活かして、商品化が実現できたことは至高の喜びです。ウナギはコラーゲンが多く、魚醤にするまで分解するのは大変でしたが、このコラーゲンにうまみがありますので、できる限り分解しました。さらに、通常販売されている魚醤に比べ、薄い色合いを出して上品な調味料になることを目指しました。これらの工夫を実現できたのは、イチビキ(株)の研究者の皆さんの技術力の賜物でした。美味しさには絶対の自信があります。

 さて、これからが第2幕の始まりです。「鰻能(ばんのう)」を皆様に知ってもらい、購入していただくために様々な取組を行います。

 そして、第3幕はこの「鰻能(ばんのう)」を使った新商品の開発です。すでにいくつかのプロジェクトがスタートしています。

 物語はこれからが本当の始まりです。どうか皆様の御支援で「鰻能(ばんのう)」が大きく育つことを願っています。利用されなかったウナギの頭が有効活用されることで、ウナギ資源の持続的利用や、ウナギの食文化の維持(SDGs)に貢献することが目的です。